かまぼこ物語
●大寅蒲鉾株式会社 顧問 杉田 之孝氏に「蒲鉾の話」をお聞きし、合わせて、蒲鉾の作り方の実演を見せてもらいました。
蒲鉾は年配の方々に好かれているというイメージを変えようと、小学生を対象に工場見学を実施し、年間約2,000名の見学者があります。子ども達は蒲鉾の出来上がる工程に興味を示し、目の前で出来上がった蒲鉾に目を輝かせて、「美味しい、美味しい」と言いながら食べてくれるそうです。こうして、子ども時代から蒲鉾の味に馴染んでもらって、幅広い世代に受け入れてもらおうというのが、目的で、啓蒙活動をしているのです。
工場見学といえば、ずっと以前に、大寅の先々代の社長に案内されて、工場を見学させていただいたことがありました。先ず、蒲鉾のできる工程の説明を受けて、工場へ入り、見学していると、社長が、「床が濡れていますから、滑らないように気を付けて下さいよ。」と注意され、「ハイ」と答えたとたんに、足を奪われ、スッテンコロリと転倒してしまいました。社長に助けていただいて、ホットしたと思ったらまたコロリ。とっても恥ずかしい思いをしたことがありました。社長がとても困った顔をなさっていたのが、目の前に浮かんできます。
今は、近代的に整備されて、子ども達も安全に見学できるので、私も機会があればもう一度見学させていただきたいと思っています。
★ふるさと自慢のかまぼこ
四方を海に囲まれた日本全国各地に、その土地で獲れた魚を原料として、風土に合わせた姿、形で、数々の伝統的なかまぼこ製品があります。
形や味わい、食感などはさまざまですが、原料はすべて海から獲れた新鮮な魚で、魚肉の栄養成分をそのまま活かした安全な食品で、北海道から沖縄まで、どこへ行っても名産として土産物として重宝されています。
以前の話だけれど、バス旅行に行くことを友人に話したら、そこの竹輪がとても美味しいから、買ってきてと、たのまれたことがありました。気安く引き受けたものの、竹輪は、早く買えば、いたんでもいけないので、帰りに求めることにしましたが、帰りのインターでは売っていなくて、随分探し求めたが、結局期待に応えられなかったことがありました。
それほど名産として有名になっているのです。
★「かまぼこ」の日
伝統食品として親しまれているかまぼこは、身近にありながら意外に <次頁へ><前頁より> 知られていないことがあります。その一つが「かまぼこの日」。約千年前の1115(永久3年)の祝宴の膳の一部として、はじめて文献に登場。それに因んで、11 月15日を「かまぼこの日」と言われています
これはあまり知られていないように思います。昨年900年を記念して、イベントなどで。キャンペーンが行われました。世界から注目されている今、これからも啓蒙されて、大きく伸びてゆくことでしょう。
★名前の由来
かまぼこの最初の形は、今のチクワ型で、この形が植物の「蒲の穂」に似ていたことから蒲の穂は鉾のような形だったことから「がまのほこ」→「かまぼこ」と呼ばれるようになりました。
★保存、おいしさの加工技術
かまぼこ製品は、すぐれた保存性に加えて魚介類のおいしさを追求した日本独特の加工技術の結晶といえます。
かまぼこは文献に登場する平安時代初期の前から、棒に魚のすり身をつけて焼いて食べていたようで、板にのせたかまぼこが、出てくるのは室町時代になってからで、板のかまぼこが出てから、すり身を棒につけたかまぼこをちくわ(竹輪)とよぶようになり、ちくわは断面が竹の輪に似ているところから名付けられました。
蒲鉾メーカーの腕の見せ所。<大寅>では、ハモ、グチ、スケソウ等を原料とし、蒲鉾の板目は、吉野杉の柾目を使い最高のもの。全ての工程で、手を抜かない。一つでも手を抜けば、全部ダメになってしまう。という強い信念の基に精進している。
レシピの通りにしても何時も同じものが出来るとは限らない。身体に沁みついたカンを研ぎ澄まし、自分で食べてみて、美味しいと思わないものは、絶対に商品として出してはいけないと、現役の工場長だった時から、引退した今でも、従業員に厳しく指導しておられるとのことです。
それには、微妙な味の違いを見分けられる舌を大切にし、自分自身の身体をいつも平常に保ち、健康に留意しなければならないでしょうし、実行してこられた杉田氏に職人としてのプロの厳しさと自信のオーラを感じました。
吟味された魚(ハモ)の練りものを、柾目の吉野杉の上に、一度に伸せてしまうのでなく、慣れた手さばきで、少しずつヘラを使って、美しくかまぼこ状に造り上げ、まるで、マジックを見ているように、見とれているうちに出来上がりました。後は焼きますが、それこそレシピ通りにはいきません。其の日の温度・湿気とか、お天気に微妙に関係してくるのです。目に見えない、職人の技・技術・工夫・カン、全てを駆使して作られているのです。 ★参考資料(かまぼこ・なんでもバイブル) 編集部