花に寄せて 万年青(おもと)
我が家の鉢植えの万年青が、真っ赤に色づいてきた。万年青はその名が示す通り、常緑の葉と赤い実が美しくて、じっと見ていると、心がなごんでくる。庭のある家に、たいてい下草として植えられているが、花だけで終わり、実のならないこともある。
我が家の万年青は、年代もので、約40年ほど前に、現在の家を購入した時からすでに、万年青は、植えてあった。敷地の真ん中に小さな住まいが、建てられてあり、周囲の空いている土地に、沢山の木々や草花が植えてあった。暫くは、その家に住み、古いながら書院造り風のたたずまいが気に入って、気分を安らげてくれていた。読書で疲れた時など庭に出て、咲いている花に語りかけるようにして時を過ごしたことが、いまでは、懐かしい想い出になってしまった。
子ども達が大きくなって、手狭になったので、建て替えることになり、家を大きくした為に当然のことながら、庭が狭くなり、木々は殆ど切り倒され、ひっそりと踏まれながら痛々しく残っていたのが、少しだけあり、万年青は、その中の一つであった。
万年青は原産地は中国、日本で。ユリ科オモト属。英名はリリー オブ チャイナ。常緑多年草で、暖地の林の中に野生も見られる。観賞用の下草として、家庭の庭によく植えられている。株が大きいので「大本(おもと)」と書かれていたが、常緑の葉を意味する漢名をそのまま用いられた。
万年青は親葉から若葉へ、新葉へと次々にゆずりつつ栄えるので、外側の古葉と内側の若葉が尽きることなく入替るのを、永続性の象徴。さらに新葉が生長すると、旧葉との内から翌年の新々葉になると実が出来るので、子孫存続・繁栄の象徴と見なして、婚礼や正月花などの慶事に用いられてきた。古くは「老母草」とも書かれていた。
我が家の庭の万年青は、まるで雑草のように増えまくり、そして時期が来れば赤い実を成らせ、私の自慢となった。羨ましがる友人に株分けしてあげたら、それがまた見事に実が成り、その友人の友人も分けてほしいと申し出があって、株分けをしてあげているうちに我が家の万年青の実が成らなくなった。そんな状態が数年も続いただろうか。株分けした皆さんは、鉢植えで咲いているので、朝日の当たる、雨が直接当たらない軒下に鉢を並べて、花が咲いた後は、花に水がかからないように注意して他の鉢植えより少なめにする。その結果、花が咲き実が成るようになった。このやり方が正解かどうか解らないが、今年は特に大きな実が成り、しかも、美しい光沢を放っている。
葛 城 陽 子