アサヒビール株式会社<アサヒの森>

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  戦死した父は、ビールが好きで、幼かった私の脳裏には、ビール腹で私を抱きかかえてご機嫌でアサヒビールを飲んでいる父の姿が焼きついている。当然のことながら、私もビールは<アサヒ>、家族も習慣的に<アサヒ>党である。目まぐるしく発売されるビール業界の数多くの新商品があるが、<アサヒ>の新商品が出ると必ず試飲して、家族で楽しんでいる。

 第二次世界大戦の影響で、コルクの輸入が、途絶えることを危惧した大日本麦酒時代(アサヒビールの前身)1941年にビール瓶の王冠に使用しているコルクの代用品として、アベマキの樹皮が候補になり、それらが多く自生している広島県の山林を購入した。結果的にアベマキの樹皮をコルクの代用品としてビール瓶の王冠に使わずにすんだが、アサヒビール株式会社にとって、事業に必要なくなった森だではあったが、多くの生きものが生息する森は、放置しておくと荒廃してしまう。そこで一部の自然林も残しながら、ヒノキやスギの植林を始めた。ビールづくりにかける情熱を森づくりにも注いだ。1960年代から植林に着手。70年以上にわたって森を育ててきた。

 森と海は密接な関係があり、充分に手入れされた健全な森からは、養分を含んだ水が川に流れ、川は海に流れ、養分を含んだ水はプランクトンを育み、貝や魚などが生息する豊かな海を作る。
 豪雨による洪水から人の暮らしを守るのも森の力。樹木の根が土砂崩れを防ぎ、地表を覆う落ち葉や草などが、侵食を防ぐ。CO2を吸収する森は地球温暖化防止にも欠かせない存在。森を育てることは、日々の暮らしを支え、守っていくことなのである。

 <アサヒの森>で間伐されたヒノキやスギは、原木市場や製材工場に出荷。主に建築材や内装材として加工され、国産材による家づくりに役立っている。国産材利用促進の一つとして間伐材を有効利用したグッズなどを全て国内で制作。商品は全国のビール工場などで販売している。また、<アサヒグループ>が運営する外食店舗向けなどにヒノキ割箸を年間100万膳生産。看板や絵馬の材料など、様々な用途を開拓している。
<アサヒの森>は、2,165ヘクタール(東京ドーム463個分)の広さがあり、全ての生き物を知ることは困難であるが、現状把握のため、2010年から2012年にかけて、15カ所の全域で調査の結果、植物668種、鳥類60種。その中に国や広島県が指定する「絶滅の恐れのある動植物」や「天然記念物」の貴重な動植物も発見できた。
<アサヒの森>は★身近な暮らしを支え★文化の伝承に欠かせない★次世代へと「未来」つくりに向かっていく。地域の子どもをはじめ体験学習もされている。 梶 康子