雑炊(ぞうすい)

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 寒い季節に、何かと重宝するのが雑炊である。古くは「こながき」といって、穀類の粉末を熱湯でといて、捕食または薬食にしたという。多くの水を加える穀汁「増水」と書くようになり、古来白カユには、塩味を加えなかった。塩を加えた穀汁を増水といった。「雑炊」は野菜その他を共に煮るようになってからの当て字で、戦後暫くは、関西では「おじや」と呼んでいたが、最近は、そうゆう言葉は聞かれなくなった。これは、もともと女房詞であった。

 雑炊は、普通カユのように米から仕立て、ありあわせの魚介類を混ぜ、塩、醤油、味噌を加えたりするが、ある辞書によると、「戦時、戦後の窮乏時代には、東京、大阪等の都会地に雑炊食堂なるものが、奨励、あるいは公営されて、食糧政策の一部を担ったこともある。」と記されているが、その戦中、戦後に少女時代を過ごした私は、戦後ずいぶん経過しても、苦しかった食生活が、頭をよぎり、雑炊を食べることが、出来なかった。特に山菜雑炊にいたっては、疎開時代に、毎日のように春になると、ヨモギ、セリ、その他の山菜を摘みに行かされたものだから、たちまち拒絶反応がおきてしまう。
 そんなある日、友人が、嫌がる私を「奈良の飛鳥に山菜料理の美味しいお店があるから」とわざわざ予約して無理やり連れて行ってくれた。(飛鳥)に魅かれて、言ってみれば、当然のことながら、雑炊も出て来て、昔食べていた雑炊とは、似ても似つかない美味しさに、山菜の素朴な真味が解りそれ以来、鍋物の後に必ず雑炊を楽しんでいる。
 因みに、私の友人で、未だに雑炊を食べない友人がいる。私もそうであったように、幼児体験の影響を拭い切れないでいるのである。
  
 鍋物の中でも「うどんすき」は、勿論「うどん」が主であるが、「すきやき」に入れる「うどん」もまた美味。その他の鍋物、チリ鍋・寄せなべ・しゃぶしゃぶ。それに若い人たちに人気のキムチ鍋の残汁に、ご飯を加えて雑炊にするが、簡単な上に美味。残汁が濃くなっていれば、薄味にして、たっぷりとさせ、煮立つと、とき卵を混ぜて、すぐに火を止めるのがコツである。色々な材料の旨味が程よく調和して、深さのある美味が、醸し出される。アオノリや七味トウガラシなど、薬味をふりかけるのもまた楽しい。
  
 鍋物の残汁を使用しないで、雑炊をつくるときは、ご飯をザルに入れ、流水でよく洗っておく。ご飯のヌメリを除く為で、サラサラの状態にして、水けを切っておく。
 1,ダシ汁に好みに味付けし煮立てる。2,ザルにあげたご飯を入れる。3,好みの具を入れ煮る。4,とき卵を入れる。常時キッチンにあるものでつくれるので便利である。
                                 東 雲 宣 子