季節の真味  ハモ つの字ハモ

hamo.jpg 昔から京都の祇園祭、大阪の天神祭が近くなると、ハモ、タコ、アジ、サバ等の消費量がハネ上るといわれていた。特に祇園祭は<ハモの祭り>といわれている。
 幼い頃、天神さん(大阪の人は天神祭りのことをそう呼んでいた)の夕方になる頃馴染みの魚やさんが、盤台にタコやハモ、その他魚介類を入れてやって来て目の前で刺身につくったり、ハモの骨切りをしたり、巧みな包丁さばきに、いつも見とれていたのを思い出す。

 ハモは梅雨の水を吸って美味しくなる魚の一つで、特製のトロ箱に「つ」の字型に納まる大きさのハモは「つの字ハモ」といわれ、高級品とされている。
 鋭い歯があってよく噛み付くところから、古語の「食<は>む」がハモになり、「和名抄」にもハムとある。魚ヘンに豊の字は、身と味が豊かなことからつくられたもの。

☆ 白身でも脂肪はたっぷりとあり、ビタミンA、D、B12、カルシュウム、鉄分が豊かで、皮に老化予防のコンドロイチンも含まれている。

☆ 海から遠い京都でハモ料理が発達したのは、ハモは生命力が強く生かしたままで長距離の輸送が、できたからだとされている。当時海産物で生きたまま京都に入ってくるのはタコかハモぐらいなので、うす味で上品なハモが珍重され、料理人は、小骨の多い調理法を研究し、「骨切り」を研究したのだという。

☆ 瀬戸内海、和歌山のいけハモは、最も美味しく、殆どのハモは高級魚として料理屋へ回され、市販していても高価である。

☆ ハモは、体色、体形ともにうなぎよりもアナゴに似ていて体長約2mに達するのもあるという。実際に使われているのは、1m以内で、季節的には、初秋を過ぎて産卵のために近接してくる50~70cmぐらいの青春期のものが、美味としてよろこばれる。

☆ マツタケの土瓶蒸に使うし、骨切りを入念にして、ナマス、カバヤキ、ハモ丼にし、内蔵は赤味噌仕立てに、卵巣は細粒で甘美。頭や中骨はざっと焼いて煮出すと、高級上品な出し汁になる。全く捨てる部分はないのである。

                              東 雲 宣 子