土 用

hisitomi.jpg  土用は四季の終わりに各18日ずつ配当されており、それぞれの入りの日が暦に記載されている。(1月17日、4月17日、7月20日、10月20日頃)
 これは、五行説によって春は木、夏は火、秋は金、冬は水に当てられ、土に当たる季節がないため、四季の終わりに分けられた。普通土用といえば夏の土用をさすが、この時期が一年のうちで、最も暑く、強い印象を与えるからとされている。

 夏の土用入りから三日後を土用三郎といい、この日快晴なら豊年。降雨なら凶年といわれ、農家はその日の天候に一喜一憂したのも昔話。今では話題になる程度である。
 土用という言葉がよく使われているが、それだけに我々の生活に関わりが多いのだろう。

●土用干し  カビや虫害を防ぐ為に、大切な衣類や書物を干して手入れをする。
●土用芽   この頃に出る新芽を土用芽という。
●土用しじみ 昔から「腹ぐすり」といわれていて、黄疸、肝臓によく効くというが、わたくしはしじみに味噌汁は、目によいと聞かされていて、食べるようにしている。殻の厚くて黒いものが、良質ということで、味噌汁作りに精を出している。
●土用餅   土用に搗いた餅。食べると力が出るという。

 ごく、個人的な事柄だが、土用餅といえば60年経っても、忘れられないことがある。
 昭和21年太平洋戦争終戦直前のある日、当時は、大阪の家が、アメリカのB29の爆撃によって家を失い、母方の縁を頼って田舎へ疎開していたが、隣家のお百姓さんが、「どよもち食べとくなはれ」と大きなお皿に山盛りの土用餅を持ってきて下さった。どよもちってなんのことかわからなかったけれど、食糧難の時に久しく口にしなかったお餅のおいしかったこと、今でも忘れていない。

●土用波   台風が南方洋上にある時に寄せてくる波のうねりのこと。
●土用殿   熱田神宮の正殿の一。草薙の剣を奉安している殿舎。
●土用丑   暑さに負けないように、栄養のあるものを食べて、夏を乗り切ろうという庶民の願いが、土用の丑の日にうなぎを食べることに定着したらしい。平賀源内が言い出したとか、うなぎ屋さんの宣伝だとか、いろいろあるだろうが、昔ながらの生活の知恵で、栄養満点のうなぎを食べて、無事に夏を過ごそうとしたのだろう。

うなぎには関西風、関東風の調理法があるが、
○関西風  頭のついたまま、腹開きにしてタレをつける長焼き。
○関東風  蒸して脂をむいて、やわらかくして、背開きにする。殆ど関西風カバヤキの大阪にあって、大阪宗右衛門町の甘辛のれん会会員の{菱富}は江戸風カバヤキ一筋の老舗である。

  東雲 宣子