花物語 ― 万年青<おもと>

omoto.jpg 万年青はその名が示すように常緑の青からきている。緑の葉と赤い実のコントラストが美しく、ちょっとした庭にも植えられている身近かさがある。

 日本原産の常緑多年草で、園芸品種が多く、100余種もあるという。

 万年青の名は、株が大きい{大本・おおもと}に由来する。万年青は常緑の葉を意味する漢名をそのまま用いたものである。

 万年青は、親葉から若葉へ、また新葉へと次々とゆずりつつ栄えるので、子々孫々代々栄える象徴として、縁起の良いものとされ、婚礼や正月花などの慶事に用いられてきた。長男が結婚するにあたり、「万年青の鉢植えを1週間ほど前に、新居の玄関においておけば厄よけになり縁起が宜しいですよ。」教えてくれた友人がいて、勿論その通りにしたことはいうまでもない。以後次男、長女の結婚の際も同じようにした。

 万年青の花は咲いても実はなかなか実りにくい。裏庭に半ば放置状態になっていた万年青が、赤い実が美しく誇らかに熟しているのを見た友人達が、株分けして欲しいというので、それぞれ株分けをし、我が家も、もっと増やそうと表の玄関の庭に植え替えたら、花は立派に咲いても実は実らなくなった。友人達も花は咲いても赤い実は実らないという。

 それから数年経過して友人から電話があった。万年青に赤い実がなったというのだ。二人して電話ごしに大喜びし、私も庭に出てみた。まだ赤くはないが、小さい青い実が、何か言いたげな、恥ずかしそうな、はじらっているように愛しく思えた。

  梶  康 子