老舗物語 ― 點心堂ちもと

chimoto.gif 先代松本繁が、東京の老舗<ちもと>より別れ、東京・芝高輪で創業していたが、昭和の初期に江戸菓子<ちもと>をかかげ、大阪市東区(現中央区)平野町に進出し、昭和29年に株式会社組織とし、39年には北区曽根崎新地に本店を構えた。

 食文化の発達した大阪にあって、江戸菓子をつくり続けた初代松本繁は、人柄、判断力、行動力にすぐれ、今日の<ちもと>の基礎を築いた。(大阪府生菓子協同組合・初代理事長)

 現二代目松本錦三は、阪神淡路大震災で壊滅状態の西宮市本町の本社工場を新築し、いち早く操業を開始した。門戸荘本店を平成8年1月に新築開店するなど、精力的に取り組んでいる。

 この時代にあって、<ちもと>の製品は、できるだけ手作りの味をと心がけ、それだけに人知れぬ苦労がしのばれる。

 1月「花びらもち」より始まり、季節を追って、春「さくらもち」、5月「ちまき」、夏「水羊羹」「若鮎」、ほのかな甘さの口当たり爽やかな「青梅」。春・秋の彼岸の季節には「おはぎ」、夏季を除いて「草団子」「おしるこ(缶入り)

 どれもが、四季おりおりに、大切に大切に、丁寧につくられた思いやりが、『じーん』と伝わってくる味わいがある。

 厳選された材料で、磨きぬかれた技に真心がこもっていて、見た目にも美しい。これらのできたての製品をゆっくりとくつろぎながら、楽しく召し上がっていただけるようにと、展開した大阪・梅田の茶寮<ちもと>は、昔からの<ちもと>フアン・買物帰りの家族づれ・若いカップルなど、幅広い年代に人気がある。

   梶 康子