食文化に思う ― 五味
味覚とは一体なにだろうか?
料理を食べたときの味を食味というが、同じ料理を食べても人それぞれが美味だとか、不味だとか、感じ方が異なる。
古来、辛・鹹・甘・酸・苦を五味とし、全ての味の基本とし、もろもろの食味を生どずることになっているが、必要なのはその調和にあり、あるいは五味に「渋」を加えて六味とする説もある。
<古今医統>に「辛は気を走らす、気病には辛を多食する勿れ、鹹は血を走らす。血病には鹹を多食する勿れ。苦は骨を走らす、骨病には苦を多食する勿れ。甘は肉を走らす、肉病には甘を多食する勿れ。酸は筋を走らす、筋病には酸を多食する勿れ。これを五禁という」とある。
一方、食味は、視覚・味覚・臭覚・温覚・聴覚と言った感覚が、それぞれ相乗的に作用するものとされている。個人の好みや、その日、その時の体調で、同じ料理を同じ人物が試みてもやはり違いのあることがわかる。
昔から味つけの順序は「サ・シ・ス・セ・ソ」といわれている。
サ=砂糖 シ=塩 ス=酢 セ=醤油 ソ=味噌
いわゆる味つけに最もスタンダードな調味料の使用法である。これらの調味料はどれからでも手あたり次第に入れて良いかと言うと、そうでもないのである。それぞれ同じ量を順序を変えて入れてみるとよくわかる。いずれも微妙に味が違うはずである。
例えば、塩を真っ先に入れたとすると、あとから砂糖を入れてもなかなか味つけしにくい。つまり、昔の人はよく言ったもので、煮しまるということである。塩で味が優先されて、他の調味料がなかなか沁みこまないのである。
醤油・味噌は発酵食品だから、はじめに入れると香りが逃げて真の味が味わえない。
東 雲 宣 子