食文化の伝承 ― かきもち

kakimoti.jpg 餅の処理法の一つ。正月の鏡餅を処理する時、刃物で切ることを嫌い、手で欠割ったからきた名で、もとは鏡開きの餅のことであったが、後になって、特にかきもち用につくるようになった。そして、寒の水を利用してつくる風習がおこった。ナマコ形または方形に伸ばして薄く切り陰干しにして貯蔵する。

 幼い頃、私は母のお手伝いをよくさせられたが、他のことは嫌なことはしぶしぶしたこともあったが、かきもちのお手伝いはもうそろそろかなと心待ちにしていた。ついたお餅を丸めるのでなく、幅10㎝、高さ3~4㎝、長さ約30㎝の大きさにして餅箱に並べて置く。餅箱はきっちりと重ねずに交互に重ね、空気が入るようにしておく。何日か経て、餅が切れるようになるまでがまたこれが楽しみで、母は頃合いを見計らっていよいよ切りはじめる。忙しさにかまけて切るのが遅れると、固くなってしまって全然包丁が入らない。そうかといって、早い目に切りだすと、包丁にお餅がひっついてなかなか切れない。

 
 母が約1センチに切ったおもちを、私が3本のワラで一つ一つ丁寧に三つ編にして、80㎝ぐらいのものを2本合わせて上で結び、軒下の竿に並べてぶら下げる。全部並べ終わるとまるでナワのれんの観を呈していた.。

 学校から帰ってくると、先ず下の方から一つずつとり、しかも、もう片一方も取らないとバランスが崩れるので同じ様にとり、火鉢のゴトクの上にアミを載せて焼くのが、とても楽しみであった。お友達に話したら、都会の子ども達はとても珍しがって「そんなの食べたことがない」と言って、押しかけてきて「かきもち大会」とか言って喜んで食べてくれたりした。

 砂糖、黒ごま、青海苔、大豆等を入れるが、私は何も入れないのを焼いてお醤油をつけるのが大好きである。

 甘辛のれん会加盟の{とよす}は、おかき・あられを高級化し、贈答用に好評を得ている老舗である。                       

   東雲 宣子