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老舗物語 ― 松前屋
matsumaeya1.jpg 松前屋は、今から百年近く前、大正元年創業の昆布の老舗である。
 屋号は真昆布のふるさと、松前の地に因んでつけられた。ロゴマークの宝船は、遠く松前から天下の台所・大阪を目指し、荒波を乗り越えてはるばると航行してきた北前船を彷彿とさせる。

 昭和十二年には創業者の松村弁二郎が他界、続く戦中・戦後の苦難の時代に二代目社長となったのはその妻・松村アヤメであった。
彼女は社員の先頭に立って、焼け野原からの再建に尽くし、戦後間もない心斎橋でお客様が長蛇の列を作るほどの人気店に成長させ、<浪速の女傑>と賞されたという。
 また、アヤメは進取のこころを持った人で、新商品の開発にも熱心に取り組んだ。中でも昭和二十九年発売の「とこわか」は、最高級の真昆布を伝統の技法で、丹精こめて炊きあげ、塩吹き昆布の逸品として今なお看板商品となっている。

matsumaeya2.jpg 味のくふうに秀いで、お客様に愛された<浪速の女傑>は「浪速のど根性と才色を兼ね備えた人」と惜しまれつつ、昭和五十五年にその生涯を閉じたが、その思いは「とはに」、「うなぎ那智黒煮」、「梅こぶご飯の素」といった現在の新商品にも脈々と受け継がれている。

 現社長の松村茂は、次のように語っている。
「松前屋は、素材選びから、製造、企画、販売を通じて、お客様の手に届くまでの全ての過程や、サービス全体を松前屋の「商品」と考えています。」

 ●お客様に快く買っていただけるように。
 ●お客様に「美味い!」と言ってもらえるように。
 ●大阪や和食の文化、心を継承し、製造・企画・販売が、一体となった日々の地道な鍛錬『しつらえ』こそが松前屋の「商品」なのである。


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