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旬のもの <きのこ>
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茸・菌・タケ・ナバ・コケ・クサビラなどの方言があり、大・小・美・醜、多種類ある。マツタケ、シイタケ、ハッタケ、シメジ、ナメコ、エノキなど食用にして美味なものも多いが、ベニダケ、テングダケ等有毒なものが相当多く、滅多やたらとに食べる物ではない。
昔から言い伝えられているように、美しい色を持ったものや、柄が柔らかくてもろいもの、傘の裏のヒダが乱れているもの、或いは陰地に孤生しているものなどは、危険なものが多いようである。また、特に医薬にのみ用いられるものも多い。
きのこは、食べるほかに、きのこ狩りもまた楽しい。丘や林の中で茸の生えていそうな所を教えてもらいながらの、きのこ狩りの楽しみは、秋の行楽の一つであった。
「日本書記」仲哀天皇の条に、栗茸狩りの記事があるが、平安朝以後は、もっぱら、マツタケ狩りを主として行ったようだ。
マツタケ狩りは、近畿を中心とする地方で、行われたのであって、マツタケを産しない地方では雑茸(ぞうたけ)狩りをする。
マツタケは、赤松の林の落葉の多い腐蝕土に、ツツジの多い山に生じ、芳香高く、風味が良いために菌類の第一位を占めている。だからといって、赤松があるから必ずしもマツタケが生じるとは限らず、関東地方の土質は、マツタケに適しないので、アカマツがあってもマツタケは生じない。

★京の北山で、数人の尼が、あられもなく踊り狂っているので、通りがかりの樵が、介抱してようやく治まり、事情を聞いてみると、仏様に献じる花を採りに山へ入ると、見事な茸が生えているので、焼いて食べると、踊り出したと言う。物好きな樵も尼の食べ残したものを食べると、同じように踊り出したという。命に別条はなかったが、踊り茸とか、舞茸といわれるようになった。             「今昔物語」より
嫁が、ときどきスーパーで買ってくる舞茸は、それを食べて踊り狂った覚えもないので、「今昔物語」に出てくる舞茸とは別のものである。             

★小石川に住むある旗本の仲間(ちゅうげん)が、庭の楓の根に出た茸を食べたところ、急に笑い出して止度がなく、腹を抱えて苦しみだした。医者が、便所に近いところの黒土を湯に入れて呑ませたら治るというので、そのようにしたところ、吐いたあとけろりと治ったとある。<笑い茸>                  「耳ぶくろ」より。
★伊豆に流された流人が、ハッタケ狩りをしていたら、故郷のシメジと同じようなのを発見し、大いに喜んで食べると、酒に酔った心地で、一途に高いところへ登りたがる。<登茸>  
★土佐の「上戸茸」等がある。
                            東 雲 宣 子
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